黒五八白の捨て猫たち

答えのその先、深淵に入り込んだ言の葉達を、見境もなく捨てていきます。問うとすれば、それは人の探究心だけ。

【狂想曲】少年博士が愛した一匹の「白い虫」

魚類約3万種、鳥類、爬虫類、両生類は約1万種、我々哺乳類は5000種、そんな中、昆虫は100万種いると言われている。

 

 

未発見の虫も数知れず、今年もまた新種が発見されている。人の計測に追いつかない進化のスピード、生物としての本能を己の外骨格に反映し圧倒的な多様性を持つ虫に僕は幼い時から魅了されていた。

 

幼稚園の時から僕は蛹に閉じこもり、でも一人で裏山で虫取りをすることは大好きだった。当然、友達は虫しかいなく、ヤブ蚊にはいつも沢山血を吸わせていたのに、園児に話しかけられると突然顔を赤くして彼らを表情と手で追い払い、いつも虫ばかりを追いかけてたから周りの人間からはしだいに無視されていった。

 

虫が寝静まる冬は寂しくて嫌いだった。一方、虫がはびこる夏は大好きで、時に玉虫のような美しい七色の虫が太陽に照り輝いて飛んでいるのを見て我を忘れて追いかけた。空中を飛ぶ虫につられ足元を全然見ていなくて階段から落ちて大けがした時もあった。とにかく虫に夢中だった。虫への偏執と狂気を感じた周りの園児はいつしか僕のことを虫博士と呼んでいた。例えば同じ玉虫でも姥(うば)玉虫という種類は実は地味な色をしていて茶色だ、という博識を既に幼稚園児で実学としてもっていたからそれなりだったと思う。

 

小学校になっても虫狂いはおさまることを知らない。自由研究では「クヌギに集まる虫たち」という名の標本を自由研究で発表。クワガタ、カブトムシ、かみきりむし、カナブン、ルリタテハナナフシ、のみならず、スズメバチも決死の覚悟で採って標本のコレクションに加えた。しかし決死したのは父親であった。僕は毒に怯えていた。昼休みは、つつじに集まるクマ蜂を虫取り網で取っては、虫かごに入れて教室の廊下側の窓の下にぶら下げて飼っていたら強烈な羽音に気付いた女の先生が悲鳴をあげて、その後怒られたというか、嫌われた。

 

そんな虫を巡る冒険に明け暮れたある日のこと。

虫取り少年の心を動かした一匹のとんでもない白い虫がいた。

 

それは東京のおじいちゃん家に従兄弟(女の子)と一緒に遊びに来て、近くの公園でサッカーをして遊んだあとの帰り道の夕暮れ。家屋の壁面に一匹の白い虫がとまっているを僕は見つけた。

 

その虫は、白いというより透き通るような青白さを幻想的にまといながら、神秘と神々しさと伝説をその体一身に集め少年の目を釘付けにした

 

「新種発見かもしれない」

 

東京のど真ん中で少年は叫んだ、この虫はもしや新種の白いコオロギかもしれないと

 

 

そして、従兄弟を新種発見の生き証人として横にはべらせ、僕は恐る恐るその白い虫を手に採った。

 

 

柔らかい。軽く握った手の中で新種の白い虫はモゾモゾと動いている。生命の躍動を感じる。

 

そして、興奮と緊張で震える手のひらを拡げ、その白い虫を目に寄せて観察した。

 

それは紛れもない

 

「脱皮直後のごきぶりだった」

 

僕の手のひらは別の感情で震えた

  

いとこは声をあげて発狂した

 

 

ちゃんちゃん